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2005年1月12日 水曜日
ピュンデ湖ベースキャンプ〜登頂〜下山
日本を離れ、4日目。とうとうピュンデ湖までやってきた。いよいよ登頂日だが不慣れな寝袋だからか、登頂に備え緊張したのか、横になってもなかなか眠れず屋根に打ち付ける雨の音が聞こえ夜中に何度も目を覚ます。雨季であるこの時期、雨中の登山も覚悟はしていたがやはり憂鬱になる。しばらくして目覚まし時計を見ると、すでに出発まで1時間前の午前0時だ。他の参加者達はもう準備に取り掛かっている。雨が気になり外へ出たがまったく降っていない。コックのラファエルに聞いてみる。

賀部 「雨降ってなかった?」
ラファエル 「さっきまで降っていたけど、もう降らないよ。」
賀部 「何でわかるの?」
ラファエル 「経験かな・・・。」



とにかくあのドシャ降りが嘘のようにやんでいるのだからそれだけで十分ありがたい。テーブルにはパンやフルーツが並んでいる。深夜であるが朝食を用意してくれたようだ。準備を整え外へ出る。装備したヘッドライトを点けないと何も見えない。日の出までの5時間位はヘッドライト頼りでの登山になる。
全員が外へ集合しガイド、ポーターも揃う。いよいよ標高4509mへアタック開始する。標高3550mの山小屋に12時間は滞在していたので、かなり体も高度に順応しただろうか。数時間前に降った雨のせいで道はぬかるんでいるが、長靴が予想以上に威力を発揮し、ガイド達のサポートで問題なく進んでいる。景色が見えず、ヘッドライトの明かりが照らす足元だけを見ながら黙々と登っていくことが、逆に良いペースに繋がっているのかもしれない。とにかく登って、そして少し下っての繰り返しである。
しばらく急な崖を登り終えると、先頭のガイドが何かを言って、皆空を見上げている。僕は空を見て全身が硬直した。満天の星空が一面に広がる。それは今まで見た星空の中で間違いなく一番の星の数であった。あまりの美しさに言葉が見つからない。全員ヘッドライトを消し満天の星空を全身で感じる。生まれて初めて見る南十字星も見つけた。疲れも寒さも忘れ、ただただその美しい星空を眺めていた。出発前にあれだけ降っていた雨が嘘のようなすばらしい星空に大満足。満天の星空の下、頂上にむけ再び足をすすめる。

ウィルヘルム山はいくつもの岩峰を巻きながら登っていく為、標高4000m以上に滞在する時間がとても長くなる。それだけ高山病にかかる可能性も高い。今のところ体に異変はないが、さすがに呼吸の乱れで酸素が薄いことを感じる。出発して5時間、東の空が明るくなってきた。雲海が紫色に染まり眼下に広がっている。

すでに3つの岩峰を超えたはず。ここまで一緒に歩いてきてくれたポーターのマイケルに、あとどれくらいか聞くと、まだまだという。いつになったらウィルヘルム山のピークが見えてくるのだろう。体力的にもそろそろ疲れが出てきて明らかに僕のペースは落ちている。先頭集団は見えるが10分位は離されただろうか。岩場での長靴登山はきついものがある。ディスカウントショップで買った長靴で、この山に登ることがとても大変なことに気がつき始めた。完全に夜が明けた。もう6時間以上歩いた。正直体力勝負を通り越し、気力だけで登っていた。写真撮影を忘れそうになるが、頑張ってシャッターを押す。ここまで来ると意地でも山頂に立ってやるという気持ちだけが頼りだ。明るくなって周りには雄大な風景が広がっているのはわかるものの、今は山頂めざし一歩一歩進むだけで景色を楽しむ余裕がない。未だにウィルヘルム山頂を視認することは出来ず、ゴールの見えない戦いのように感じる。新しい岩峰が見えるたびにマイケルに「ウィルヘルムか?」と聞くと、「ノー」と答える。そんなやり取りをもう7回も交わしている。もうしゃべる気力も無くなった。

そうこうしてまた新しい岩峰が目の前に現れとガイドが僕にほほ笑みかけ一言、「マウントウィルヘルム。」あまりにも突然姿を現したウィルヘルム山に僕は驚いた。その姿は今まで通り過ぎてきた岩峰とは迫力が違っていた。そしてこの大きな塊を4,509mまで押し上げた地球の力に驚愕するばかりである。ゴールが見えると俄然やる気が出てくるからおかしい。頂上への岩場はよじ登ると言った方が良いだろう。一歩一歩慎重に登っていく。すでに先頭集団の数名が山頂で歓声を上げているのが聞こえる。その声を聞いてか僕も思わずほほ笑んでしまう。あと少し。あと少し・・・。
最後の岩場を登り終え、思わず叫んでしまった。
「来たぞー!」
360度の大パノラマである。標高4,509m、パプアニューギニア最高峰、ウィルヘルム山の頂上だ。
目を閉じ大きく深呼吸をする。風の音以外何も聞こえない。この壮大な眺めは地球上とは思えないところだ。この感覚は実際に頂上に立った人だけにわかる頑張った者だけが体験できる快感だと思った。

さすがにマイケルも疲れた様子だ。僕の重い荷物を持ち、僕をずっとサポートしてくれたマイケルにお礼を言う。マイケル9回目の山頂である。もう一人のポーターのタカイはなんと今日が95回目の登頂らしい。恐ろしい男だ。そして最後方の参加者が山頂にやってきた。めでたく参加者全員が登頂成功である。全員で記念写真を撮る。僕自身、そして参加者の皆さんも、天候の回復、雄大な景色、全員登頂すべてにおいて大満足であった。短い時間ではあったが、ウィルヘルム山の山頂での時間を堪能した。



ニューギニア政府観光局・賀部 祥平
(1/8〜1/15弊社ツアー同行)

   


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