山旅情報誌 Newsletter

 ちまたではネパール大好き人間をネパ・キチというらしい。ブラジル大好きはブラ・キチで中国だとチュウ・キチとか・・・最近ぼくは、自分が相当のネパ・キチだと自覚し始めている。ネパールは、一度行くとまた行きたくなって、ネパ・キチ菌に感染しやすい国であることは確かである。でもSARSや鳥インフルエンザではないから安心してほしい。わが社にもネパ・キチ菌感染者がうじゃうじゃいるが皆元気ハツラツとしている。

 2月18日に日本・ネパール国交樹立50周年記念イベントの一つとして企画された(社)日本ネパール協会主催のネパール観光産業に関係するシンポジウムが東京の品川の高輪タウンハウスで開催された。ネパールで地方選挙がおこなわれた直後のシンポジウムとだけあって、旅行業界紙も取材にきており、旅行業界内でのネパール観光へのつよい関心がうかがえた。

 シンポジウムのパネリストは、わが社を含むネパールを扱う日本の旅行会社3社の代表者と、ネパール観光局に勤務していた元JICAシニア・ボランティアの方で、進行役は日本ネパール協会の理事でネパールの教育に力を注いでいる方であった。シンポジウムは、在日のネパール人も多く参加し、活発な意見交換や話題提供で盛り上がった。ネパールにはヒマラヤだけではない観光要素がたくさんあって、とても一口では言い表せないぞ、といった雰囲気であった。

 ネパールは、ご承知のように小さな王国ではあるが、世界の中でも類を見ないバリエーション豊かなディスティネーションだ。まさに観光立国を標榜するにふさわしい国なのである。ネパールを縦に切ると、8,848mから亜熱帯のジャングルまで豊かな自然があり、

 

また多種多様な文化に恵まれ、多くの民族が暮らしている。これは、地球上の財産ともいえるのではないだろうか。世界自然遺産と文化遺産がいくつか登録されていることでも証明されている。

 そんな環境の中でネパールの観光は、ここ15年ほどでめまぐるしく発展してきた。また、日本人の旅行に対する価値観も変わってきている。一昔前までは、香港やヨーロッパでブランド買い物ツアーなどがはやっていたこともあったが、いまは、実際の目でみて、手で触り、鼻で嗅ぎ、汗を流して歩き回り、土地の人々の生活も垣間見る、といった自分自身の五感と心に訴えることができる、本当の価値観が得られる旅行というものに目が向き始めている。そういった意味では、ネパールという国はまさにベスト・カントリーなのではないだろうか。

 とはいえ、最近のネパールでの地方選挙について、日本でもこれに関してのテレビ放映がされたが、このシンポジウムの席上では、どちらかというと断片的な映像がもとになった番組であったという意見も多く聞かれたのである。ここで、メディアに対する批判をするつもりはないが、私たち旅行業界人や、ネパールへ旅行を計画している人、そして日本に在住しているネパール人にとって、これらメディアに対する願いはただひとつ「もっと正確な事実を伝えて欲しい」ということだけなのだ。

 現在、欧米人のネパール渡航者数は増加傾向にあり、カトマンズの高級ホテルは満室の日も多くある。小さな商店が所狭しと立ち並ぶカトマンズのタメル地区は(日本人以外の)外国人客でにぎわっている。最近、中国人旅行者も激増している。やはり日本人はいろいろな情報に敏感なのだろうか。


   ツーリストは、国際観光民間大使であると思う。民間大使は、9.11テロやイラク戦争、SARS事件を乗り越えてはきたが、まだまだハードルはたくさんあるように思える。ネパールがもし、無差別テロの国であったら、わが社はもちろんのこと、日本政府としたってネパールに行くべきでないというだろう。でも、現在、外務省の危険情報のレベルは昨年の9月に主要観光地域が「十分気を付けて」に引き下げられたり、以前から注意喚起が発出されていない地域も含めてまったく変化していない。すなわちトレッキングの人気エリアであるエベレスト山麓やランタン谷、マナン、ジョムソン、ムスタンなどの高山地帯には、日本政府外務省から特段の危険情報は出されていないのが事実なのだ。反政府主義者のマオイストのトップは、「われわれは外国人には危害を加えない」と公式に発表している。これもまた事実なのである。

 私たちがやるべきことは、「現地の正確な情報を、ネパールを愛する人たちに伝えること」が一番重要なのではないだろうか。そして、ネパールという国を、たくさんの人にもっともっと知ってもらい、ネパ・キチ菌を増殖させることだ。それが結局、観光立国を標榜し、国内内政問題がないとはいえないこの国のためになると信じている。

私たちは、ネパールヒマラヤを手がけて36年だ。今年は、日本・ネパール国交樹立50年の記念すべき年でもある。これから先もずっとずっと先までもネパールへの旅行企画を手がけていくことを誇りにしたい、と心の底から思っているのである。


▲観光客が集まるダルバール広場

▲エベレストを眺めながらトレッキング

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