山旅情報誌 Newsletter


アルパインメイトのご案内


Newsletterより抜粋
文:猪熊 隆之(東京本社)

 近年、日本でも人気が出てきたスノーシュー・ハイキング。一昔前までは冬山といえば、一部の技術と訓練を積んだ登山家だけの世界でした。そのイメージを180度転換したのが、この便利な道具です。そもそも、冬はハイキングに魅力のない季節ではありません。太平洋側では年間で天候がもっとも安定した季節であること、気温が低いため空気が澄んでいること、樹林帯は葉が落ちて見通しが利くことなどから、冬は展望を楽しむのにもっとも適した季節と言えるでしょう。ハイキングを楽しむための障害となっていたのが、寒気と積雪(登山道が雪に埋まってしまうことも含めて)でした。ところが、近年はウェアや靴が改良されて、寒気に耐性のある服が手に入るようになり、冬山登山者が常用していたワカンよりさらに雪に沈みにくく、傾斜の緩い所では機動性を発揮し、格好の良い!(これが結構大事)スノーシューが欧米から入ってくることによって、登山道が埋まる冬でも雪の上を自由に歩き回ることができるようになりました。無雪期に藪に覆われるような山では、むしろ冬の方が歩きやすいことさえあります。それに、スノーシュー・ハイキングは特別な技術を必要としません。基本的な歩くという動作が主体となっており、スノーシューの着脱も簡単ですので、山歩きをされている方でしっかりした装備を用意すれば、誰にでも楽しむことができるスポーツです。そういう意味で、スキーやスノーボードが出来なくても雪山に入ることができる“冬のハイキング”として中高年の登山者を中心に広まっています。

▲山里の冬(ヴァリス地方)
 
国内ではこのように流行してきたスノーシュー・ハイキングも海外で楽しむ方はまだまだ少数です。旅行会社で海外のスノーシュー・ツアーを企画している会社はごく僅かですし、個人的に行かれる方もスキーやスノーボードに比べると少ないのが現状です。

▲ヴェッターホルンを見ながら絶景の中をハイキング
しかし、夏には絶大な人気を誇るヨーロッパ・アルプスや、カナディアンロッキーなどのハイキングが冬に人気がないのも不思議なものです。「もったいない!」というのが私の正直な感想です。冬に出かけることを敬遠する人は、まず最初に「寒いから。」と言われます。確かにその通りです。しかし、建物や乗り物の暖房設備はしっかりしていますし、ハイキングも晴れた日は日差しが強く、思ったよりも温かです。吹雪いている日には無理をしないで建物の中で暖かいコーヒーを飲みながら、降りしきる粉雪を眺める、というのもオツなものです。「冬には花がない。」とも言われます。確かにそうです。しかし、逆に夏にはないものがあります。それは雪です。「なーんだ。」と言われてしまいそうですが、雪の美しさは言葉では言い表すことができません。気温が低く、日本より湿度の低いスイスの山間部では、結晶のまま雪が落ちてきます。降雪時に手のひらを上に向けていると、綺麗な形の結晶を手の中に見つけることでしょう。これらの結晶は様々な形をしていて、どうしてこんな形が出来るのか、自然の神秘さ、その不思議に心を打たれることでしょう。また、雪は様々なものの表情を変えていきます。教会やシャレー風の家の屋根を白く染め、ロマンチックな風景を演出してくれます。また、家々の窓に灯りがともる夜の風景は、幻想的で別世界に迷いこんだような錯覚を覚えます。アルプスの山々や氷河も、湖やモミの木も雪は全て真っ白に染めていきます。そして、よごれたものをすべて覆い隠してくれるのです。雪が止んだ後、大自然はさらにすごい贈り物を届けてくれます。吸いこまれそうな程青い空、太陽に照らされた雪晴れの峰、感動的な光景に言葉を失って立ち尽くすことでしょう。
 厳しい自然が生み出す神秘的な世界、冬のアルプス。あまり知られていないハイキングの舞台だけに、きっと新しい発見が待っていることでしょう。それをつかまえるかどうかはあなた次第です。


戻る