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Newsletterより抜粋
 文 編集長 黒川 惠

全国山岳遭難対策協議会
 昭和39年に東京で初めて開催された「全山遭」40回目の今年は、7月4日と5日の2日間にわたり滋賀県大津市で開催された。これは、文部科学省や警察庁が主催し、全国から山岳関係者が集まって山岳遭難予防と対策について多方面から話し合う協議会である。私は、平成11年度の山形会場から出席し、13年度の大分では「ツアー登山、中高年登山の現状と問題点」について事例発表を行う機会を得た。
 この協議会に出るきっかけは、業界団体の(社)日本旅行業協会からの呼びかけであった。中高年登山が百名山ブームとともに盛んになり、旅行業者も登山やハイキングを目的とする企画をどんどん発表し、取り扱い人数もうなぎ登りになった。それとともに事故の発生も目立つようになってきたので、適正な発展をめざすべきだといった気運も出始めた頃である。
 そもそもわが社は、登山が一番得意だと自負している連中が始めた会社で、社員のほとんどが山岳部やワンゲル出身で(ガールスカウトもいるけど)、登山・トレッキングを生活の糧にしているわけだから、全国山岳遭難対策協議会での顔見知りはみんな山岳関係者ばかりなのは当然だ。それにしてもいわゆる旅行業者の面々がほとんど参加してこないのはどういうことだろう。この協議会で旅行業者が取り扱う「ツアー登山」のことが毎回協議テーマになっているというのに。

山岳事故発生件数は過去最高
 警察庁の発表によると平成14年中における山岳遭難は、
○発生件数 1,348件
○遭難者総数 1,631件
であり、前年と比較して
○発生件数 128件増加
○遭難者数 161人増加
であった。
 発生件数が平成10年以降5年連続して1,000件を超え、警察庁において統計を取り始めた昭和36年以降、発生件数、遭難者数とも過去最高となった。特徴は、40歳以上の中高年の比率が依然として多く、道迷いや健康問題、気象判断の誤り、登山計画書の未提出等の登山の基本的知識を欠いたことによる遭難が多く、軽装や装備不充分による遭難が絶えないのが実状である。
ツアー登山なら安全か
 平成14年中のツアー登山者の山岳遭難発生状況は、
○発生件数   41件(41名) 
うち死亡7名 重傷19名 軽傷7名 
無事救出等8名、であるから全体件数に対する事故の比率は決して高いものではない。
 だからと言って、「ツアー登山の安全率は高い」と断言できないのがつらいところだ。なぜなら登山は、自己責任が基本で、他者依存では成り立たないものだからである。一般登山道からの転滑落等、登山者自身の過失が明らかな事故や、病気などは、登山道の管理者やリーダーや山仲間など他人への責任転嫁はできないだろう。それでも、旅行業者が介在するツアー登山であれば、参加者は「より安心」だと思えるツアー造成と現場での安全運行をめざすべきだということが、登山・トレッキング専門会社を標榜するわが社の持論でもある。

旅行業者の取り扱いは20万人
(社)日本旅行業協会と(社)全国旅行業協会の調査によれば、ツアー登山を取り扱っている会社は、約80社で1年間の取り扱いはおよそ20万人である。この中には、日帰りバスの低山登山や散策程度の軽ハイキングも含まれている。本格的な縦走登山などはかなり少ないはずだ。いずれにしろ、低山だろうが、散策だろうが、「救急車が入ってこられない地域」でのツアー造成は、企画立案段階から現場での運行まで旅行業者が配意し、遵守すべき事項はたくさんある。それに大勢で自然の中に出かけるのだから環境保全問題についても無視はできない。
 それらについて取り扱い旅行業者が主体的にさらに研究を重ね、配意事項や遵守事項をとりまとめて、しっかりしたガイドラインを設定すべきではないかといったことが両業界団体において真摯に検討されてきた。私は、言い出しっぺの一人として、目的を共にする主な会社と協議を重ねてきた。大手の会社から数人規模の専門会社までが同じテーマで協議するわけだから温度差があるのは当然で、いったいどうなることかと思わせるようなスタートではあった。しかし、何度かの会合を重ねるうちに、(社)日本旅行業協会と(社)全国旅行業協会の両事務局の尽力もあり、ついに「旅行業ツアー登山協議会」として日本全国から65社が名を連ねるところまで進めることができた。
 そして、7月23日には旅行業を所管する国土交通省も出席し、この協議会の設立総会が開催されるところまで進展したのである。山形県上山温泉での「全山遭」で、ツアー登山のありかたと旅行業者の取り組み姿勢について各方面から指摘を受けてからちょうど4年がたったことになる。
 「旅行業ツアー登山協議会」の発足は、旅行業者の集まりとして、さらに登山との関わりを適正に深めてゆくための、まさにその第一歩となるのである。

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