Newsletterより抜粋
文 編集長 黒川 惠
旅行業者が取り扱う「ツアー登山」参加者は、年間でおよそ20万人である。
旅行業ツアー登山協議会には、それら旅行業者の大半が加盟している。しかし、協議会は発足わずかのよちよち歩きで、つかまり立ち状態だ。それでも年間20万人が協議会メンバーの会社で登山しているのだから、いつまでもおむつをしているわけにはゆかない。
そこで協議会では机上講座等を開催し、さまざまな分野での研修をおこなうことにしている。すでに終了したものは、山の気象、山の医学で、継続的に自然の仕組みについての勉強会も開催している。いずれは山岳トイレについての勉強会もおこないたい。
とはいえ、すでに年間20万人が、旅行業者の介在で登山行動をおこなっているわけだから、まごまごしていたらすべてが手遅れになる。どんなに少なく見積もっても20万リットル以上のウンチとオシッコを山の中で発生させているのだから。
1日あたりでこの分量だから、登山日数が増えたり、付帯するゴミも含めたらいったいどうなるのか。もし20万人が、丸2日間を山で過ごしたら、4トントラック100台で足りるのだろうか。わが家は最近仮住まいに引っ越したが、家財一式を2トンのロングで2回運んだ。それが100回なのだから途方もない分量だ。
一人の登山者が排出するし尿とゴミはわずかなものでもまさにチリもつもればである。
私の青春のハイマートは剣岳だった。ウンチもオシッコも垂れ流しで、岩場の途中でもルートを外し、雪渓でも片隅に寄って、かまわずした。だれにも文句を言われなかった。山の中では食い気と色気は我慢できても排泄だけは我慢できなかったからだ。
さて、旅行業ツアー登山協議会は、この問題にどう取り組むべきか。目先の問題として参加者に対する注意喚起の項目を示したい。
1. し尿問題を平易に説明する。すなわち水質汚染と植生への影響。そして山小屋の負担についても。
2. 登山開始前に排泄しておく。行動中はとりあえず我慢。排泄はトイレ施設を利用する。ルート途上のトイレ施設について事前情報を与える。
3. それでも我慢できなければ、登山道を外し、水流から充分離れ、(穴を掘り)排泄する。紙は持ち帰る。携帯トイレの使用も積極的に考える。
4. 山小屋のトイレの中には他人の目がないけれどルールを守る。余計なものは捨てない。有料トイレの趣旨を理解してもらう。
5. 山は不便なところだ、ということを充分に理解してもらう。(理解できない人には街に帰ってもらう)
課題(旅行業者の集まりとして)
1. 20万人の登山者を扱う旅行業者の集まりとして、し尿問題について山小屋等受け入れ側だけの問題に置きかえることは不適切である。しかし、旅行業は、交通機関、宿泊施設等を利用する立場の業態であり、自らサービスを提供する立場ではないから、施設面については受け身の立場であるということも言える。ましてや山岳トイレを自ら設置することは困難だから、せめて適切な施設の設置に協力するべきだと考えている。どのような協力態勢をとるべきか、関係者間協議が必要となる。
2. ツアー登山の参加者は、たいがい未組織登山者であるから、理想的には善意にあふれた管理登山であるべきで、主催者側に見識と指導力がともなっていれば、未組織登山者への啓蒙運動の場にもなりうる。山のトイレのありかたについても周知させることは可能だろう。
3. 適正規模の適正利用をめざすことが肝要。そのためには価格訴求からの脱却が急務で、とくにツアー登山においては、安全配慮の分野と同様に環境問題についてもコストがかかることを旅行業者は認識すべきだろう。下職に負担をかけるだけがコストダウンではない。格安バスツアーで信じられない人数を山へ送り出すことをつづけたら自然はそこなわれ、自然の価値が減少することを知るべきだ。特定地域への入山料徴収も検討されるべきではないか。ツアー登山税なんてどうだろうか。。
|