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【カナダ特集】カナディアンロッキーに現存する氷河

【カナダ特集】カナディアンロッキーに現存する氷河

失われつつある現存氷河

最後の氷河期の時代には陸地の27%が氷河に覆われていたと言われますが、現在は10%ほどを覆っているに過ぎません。地球温暖化の影響や様々な要因により氷河が後退していることはよく知られていますが、実際は私たちが思っているよりも遥かに早い速度で後退しています。2000年以降の氷河は1980年代の3倍のスピードで後退していると報告されており、学者の見解によると、今世紀の終わり頃にはカナダの氷河の74~96%が失われると言われています。これからの100年は大陸や山岳地帯から氷河がなくなった時代として記憶されることになるかもしれません。

氷河が無くなることは、ただ美しい景観が失われるというものではありません。氷河は天然の貯水地としての機能を持っており、地球上に存在する淡水の70%近くを占めています。冬に生成された氷が夏にゆっくりと溶けながら、大地に水の恩恵をもたらしているのです。そのため、氷河の消失による生態系への影響は計りしれず、水の利用性においても私たち人間社会へ大きな影響をもたらすことになると言われています。カナディアンロッキーを訪れて、この失われつつある人類の遺産を見る時、大自然に対する尊厳を感じると同時に、地球の未来に向けた想いを馳せることでしょう。

氷河の歴史は地球の歴史

現在、私たちが見ることのできる氷河は、約1万年前に起こった最後の氷河期の産物であり、アラスカやグリーンランドなどの極地や、カナディアンロッキーなどの高山地帯だけに見られるとても貴重なものです。最後の氷河期にカナディアンロッキーの大部分を埋め尽くしていた巨大な氷河は、長い年月をかけながら周囲の山々を削りとり、今の壮大な景観を創り出しました。巨大な氷河から流れ落ちる解け水は「グレーシャーブルー」と言われる神秘的な色彩を放ち、数々の美しい氷河湖を形成しています。

カナディアンロッキーを訪れて眼前に広がる壮大な景観を目の当たりにする時、遥か悠久の時が刻んだ地球の歴史を垣間見ると同時に、人間のちっぽけさを感じずにはいられません。ロッキー最大の規模を誇るコロンビア大氷原は有名ですが、3,000m急の山々の谷間にも多くの巨大な氷河を見ることができます。中でも有名なものは標高3,459mの名峰ビクトリア山に広がるビクトリア氷河です。ビクトリア山の正面に位置するフェアビューマウンテンの山頂からは、巨大な氷河から流れ落ちて、ロッキーの宝石と称されるレイクルイーズへと注がれる圧巻の絶景を見ることができます。