世界の山旅を手がけて49年 アルパインツアー

朝鮮半島最高峰・白頭山（ペクトウサン）に始まり、東の海岸線に沿って南に延びる白頭大幹（ペクトウテガン）が、太白山（テペクサン）を経て南西側に至り、最後の山が智異山（チリサン）です。尾根は15の支尾根と15の渓谷からなっており、川と交わり海へと延びています。東西に長く延びた主稜線の長さは40km 以上にわたり、裾野の外周はおよそ300km。高さこそ漢拏山（ハルラサン）に譲るものの、裾野の外周は漢拏山の3.3倍、雪岳山（ソラクサン）の2.4倍もあると言われています。智異山最高峰・天王峰（チョンワンボン/1,915m）を何回登ったか自慢しようとする人もいるそうですが、智異山の真の魅力は、長大な主稜線を縦走してこそ味わえると言えるのではないでしょうか。

①天王峰（チョンワンボン）の日の出
四方に視界を遮るものがなく、荘厳と広がる尾根の間に雲海が漂う。太陽は蒼白の雲海を朱色に染めながら、突然昇ってきます。標高1,950mの天王峰に立つと韓国で2番目に高いところに立っていることを実感できます。「三代にわたって善い行いをしないと拝めない。」と言われる日の出です。
②稷田（チクチョン）の紅葉
十月下旬にピークを迎えるピアゴルの紅葉は、智異山の白眉として数えられます。朝鮮時代のある儒学者が「ピアゴルの紅葉を見ずして、紅葉を見たと言うなかれ。」と言ったほどの紅葉です。
③老姑壇（ノゴタン）の雲海
華厳寺（ファオムサ）から渓谷を4時間以上登り、標高1,507mの老姑壇（ノゴタン）にたどり着くと、なぜこの遠い道を息を切らしながら登ってきたのか知らされます。春から夏にかけて華やかな花々が咲き誇る老姑壇（ノゴタン）で、うっすらと錦をかけたように雲霧がたちこめると、まさに雲上の楽園になります。

④般若峰（バニャボン）の夕日
老姑壇（ノゴタン）から般若峰（バニャボン）まで、ピアゴルとシムオンゴルの渓谷を見下ろしながら、ゆっくりと足を運ぶと女性の乳房のようにふっくらした般若峰（1,732m）にたどり着きます。数多くの峰と渓谷があるものの、なぜか般若峰に沈む夕日だけが金色を帯びており、金色に染まった空と山を見ていると、後にしてきた日常がウソのように感じられます。
⑤碧宵嶺（ピョクソリョン）の明月
徳坪峰（ドクピョンボン）の空の上に丸い月が顔を出すと、その明かりは白く澄んでいて、青味さえ帯びています。詩人・高銀（コウン）が「薄暗い森の裏の峰に満月が昇ると、その極限の月明かりが天地に砕け散る燦爛（さんらん）たる静寂は、碧宵嶺（ピョクソリョン）でないと味わえない。」と称えました。
⑥細石平田（セソクピョンジョン）のツツジ
5月になると細石平田（セソクピョンジョン）には、赤やピンクのツツジの花の炎が広がり始めます。その名の通り、小さい石が多く、清らか泉も湧き出ており、毎年ツツジのシーズンになると多くの人々でにぎわいます。
⑦仏日顕瀑（プリルヒョンボク）
清鶴峰（チョンハクボン）と白鶴峰（ペカボン）の間の険しい谷を流れ落ちる滝。60mの絶壁から落ちる滝の音は壮快で、水晶のような水しぶきは、真夏には身がすくむほどの冷気を感じさせます。

⑧烟霞峰（ヨナボン）の仙境
いつも霧がたちこめている烟霞峰（1,730m）の周辺では、今にでも神仙が現れそうだということから、烟霞仙境と言われています。細石平田（セソクピョンジョン）と場基頂（チャントモク）の間の岩塊と断崖絶壁からなる烟霞峰（ヨナボン）の麓に座っていると、流れゆく雲霧の中でまるで神仙になったような気がします。
⑨七仙（チルソン）渓谷
韓国の三大渓谷のひとつであり、智異山最後の原生林地帯でもあります。衣を脱いで渓谷で遊んでいた仙女に惚れて、再び天に帰れないように仙女の衣を隠して嫁にした、木こりの伝説が伝えられる渓谷です。
⑩蟾津江（ソムジンガン）の清流
山が深ければ水が深い。川の流れは青い絹織物を広げた如く、砂浜はきれいな布を敷いたように白い。ヒキガエルを意味する「蟾」の字がつけられたのは、高麗時代の大雨の時に、数えきれないほど多くのヒキガエルが集まり、非常に長く連なっていたことから名づけられました。